2021年4月 Blood Advで報告しました。

Antineoplastic and anti-inflammatory effects of bortezomib on systemic chronic active EBV infection. Blood Adv. 2021;5(7):1805-1815.

 

【研究背景・目的】

慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active EBV infection; CAEBV)はEBVに感染したT細胞もしくはNK細胞がクローナルに増殖し、全身の慢性炎症を伴う希少疾患です。つまり、CAEBVは炎症と腫瘍、二つの顔をもちます。現在、腫瘍細胞を根絶し得る化学療法はなく、唯一の根治療法は同種造血幹細胞移植です。炎症を抱えたままの移植成績は不良であることがわかっており(Bone Marrow Transplant. 2016;51(6):879-882)、抗炎症、抗腫瘍の両方に有効な化学療法の確立が望まれています。私たちは先の研究で、CAEBVの腫瘍細胞では細胞生存を正に制御するNF-κBが恒常的に活性化していることを報告しました(PLoS One. 2017;12(3):e0174136)。そこで、プロテアソーム阻害を介してNF-κBの活性化を抑制するボルテゾミブに着目し、その有効性を検証することにしました。 

【結果】

EBV陽性T/NK腫瘍細胞株およびCAEBV患者腫瘍細胞を用いた実験では、ボルテゾミブによって細胞増殖が抑制され、細胞死(アポトーシス)が亢進しました。さらに、炎症性サイトカインであるTNF-αやIFN-γのmRNA発現も抑制されました。ボルテゾミブによって小胞体ストレスが亢進することが知られています。本研究での細胞死は、小胞体ストレスによってJNK, p-38, p53といったアポトーシス促進シグナルが活性化され引き起こされたということが明らかになりました。

実際に生体内でボルテゾミブが有効であるのかを検証するために、疾患モデルマウスにボルテゾミブを投与する実験を行いました。ボルテゾミブ投与により、臓器中のEBV感染細胞が減少し、血液中の炎症性サイトカインが抑制されました。

 【意義】

本論文はCAEBVに対するボルテゾミブの有効性について、細胞を使った実験だけでなく、モデルマウスへの有効性も示した最新の知見です。私たちは「医療に還元すること」を念頭に日々研究を行っています。今後もCAEBVの腫瘍化メカニズムの解明によって、新たな治療法を開発し、それが患者様に還元されることを目指して参ります。

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・「定量ストリップ法によるEBウイルスDNA定量検査の有用性の研究」
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2019年1月9日 共同プレスリリース
慢性活動性EBウイルス感染症を対象にJAK1/2阻害剤ルキソリチニブの有効性、安全性を確認する医師主導治験を開始
20190109.pdf
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2018年11月26日 日本経済新聞
「慢性活動性EBウイルス感染症を対象としたJAK1/2阻害剤ルキソリチニブの医師主導治験」紹介記事
20181126.pdf
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2018年10月9日 慢性活動性 EB ウイルス感染症の診断を受けた患者さんへ
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2018年8月6日 共同プレスリリース
慢性活動性EBウイルス感染症の病態成立におけるSTAT3の関与について
20180806.pdf
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